トランプ前大統領 暗殺未遂事件で シークレットサービス を支えたライフル

トランプ前大統領 暗殺未遂事件で シークレットサービス を支えたライフル
トランプ前大統領 暗殺未遂事件で シークレットサービス を支えたライフル
 

歴史的な暗殺未遂事件となった現場で シークレットサービス の活躍を支えたスナイパーライフルとは?

2024年7月13日(日本時間14日午前)、ペンシルバニア州バトラーの選挙集会で演説をしていたドナルド・トランプ前大統領が銃撃されるという衝撃的な事件が起きたことは、読者の方々もご存じのことだろう。トランプ氏は右耳を負傷するも命に別状はなく、ステージ後方の建物上に配置された シークレットサービス (USSS=United States Secret Service)の狙撃手により犯人は射殺された。

今回の事件では シークレットサービス の警備体制を疑問視する声も上がっているが、セミオートとはいえAR15で武装した犯人に数発程度しか撃たせず、迅速な対応をみせたUSSS隊員。技量の高さと冷静な判断力は流石といったところだ。

また、通常では目にする機会も少ないUSSS隊員の活躍が映し出されたこともあり、使用しているライフルなど装備についても注目を集めている。事件の背景や政治的な動向は報道機関に任せるとして、本稿では シークレットサービス の活躍を支えている銃器などについて取り上げていこう。

シークレットサービス
Gene J. Puskar/AP通信

当記事では各銃器メディア、米国ニュースサイトをはじめとした情報を総合的にまとめて制作しています。詳細な情報は非公開となっており、画像・映像などから考察せざるを得ない部分もあるため正確な情報ではない場合があります。予めご了承ください。

参考とした主な記事:
TFB(THE FIREARM BLOG)「Secret Service Guns And Gear at the Trump Assassination Attempt」
CNN「In pictures: Trump injured in shooting at Pennsylvania rally」

カウンタースナイパーが使用するAX AICS Remington M700

今回の事件で犯人を仕留めたのはホワイトハウスや外国要人、大統領候補者の警護を行うUD(Uniformed Division)所属のカウンタースナイパーチームで、使用したスナイパーライフルはRemington M700である。ただし、Accuracy International AXシャーシシステムに換装されており、海兵隊が使用するMk13 Mod7に非常に酷似したビルドとなっている。

Remington M700 AX AICS
EPA通信

Accracy International AX AICS

MK13 Mod7

このライフルはJAR(Just Another Rifle)と呼ばれる特注品であり、本件以前より使用が確認されているボルトアクションである。しかし、これまでに見られたシュミット&ベンダー(Schmidt & Bender optics)のスコープとは異なり、ナイトフォース(Nightforce)のATACR 7-35x56mmライフルスコープが搭載されている。また、スコープ上部にはENVISION TECHNOLOGYのMARS LRF(レーザーレンジファインダー=レーザー距離計)が搭載されている。

USSS カウンタースナイパー
2020年に撮影されたUSSSカウンタースナイパー隊員:ロイター通信

ATACRスコープについては、2022年にアメリカ陸軍特殊作戦軍の主催で行われた国際狙撃競技会に参加したUSSS隊員のセットアップでも見られたが、これが正式に入れ替えが行われているものなのか、隊員や任務による選択の差なのかは定かではない。また、競技会ではレーザー照準器とLRFを兼ねるウィルコックス(Wilcox)のRAPTAR Sが搭載されていた。

Nightforce ATACR
2022年の国際狙撃競技会に参加したUSSS隊員:Ken Kassens/U.S. Army

JARのシャーシを製造するAccuracy Internationalは、L96A1を生んだことで有名なイギリスを拠点とするライフルメーカーである。しかし、あくまで銃身や機関部には誕生から60年以上の歴史を持つRemington M700を使用しているのは、アメリカの公的機関における絶対的な信頼性の高さを伺わせる事例である。またその背景には シークレットサービス が使用するにあたり特注された仕様の秘匿性を担保する意味合いも強いのではないかと予想される。

檀上にはCAT隊員の姿も確認される

トランプ氏が銃撃され多くの警護官が駆け付けた直後、ステージ上にはCAT(Counter Assault Team)隊員の姿も見られた。CATは武装した襲撃者に反撃を行い、要人退避の時間稼ぎや無力化を行う特殊部隊であり、今回の暗殺未遂事件では複数犯である可能性も踏まえて、会場内や別の方向からの襲撃に備えた動きをしたものと思われる。

通常、CATは身辺警護よりも周囲の警備・警戒を行う部隊のためメディアに映し出される機会も少なく、期せずして現場での動きを目にすることとなった。

USSS CAT隊員
Evan Vucci/AP通信

ローレディされたライフルはUSSS CATではお馴染みのKAC SR-16 CQB MOD2.1で、サプレッサーにはQDCサイレンサーが装着されている。

光学機器はAimpoint T2 ドットサイト、BE Meyers MAWL レーザーデバイス、ウェポンライトはスイッチケーブルのジョイントからSUREFIRE スカウトライト系と思われるがモデルは定かではない。また別の隊員はModliteらしきもの装着しているようにも見える。アクセサリー類については多少選択の幅があるのかもしれない。

マガジンはMAGPUL(マグプル)のPMAG GEN M3 Windowが使用されている。

シークレットサービス 特殊部隊
Evan Vucci/AP通信

Counter Assault Team
Evan Vucci/AP通信

 
本記事は、サバゲーメディアの視点としてUSSS装備に注目した内容として執筆した。趣味性の高いメディアであるため事件に関しての見解について述べるつもりはないが、銃器使用の有無にかかわらず暴力・犯罪に対して当然ながら強く否定する姿勢を示しておく。

また犯人が放った凶弾は、妻子をかばった地元の消防士の命を奪い、他にも2名の重傷者を出すなど痛ましい事件となった。本事件の被害者やその遺族に対し、哀悼の意を表する。